2020年11月15日日曜日

やっとご報告できます!辛かった航海本当の理由ーもうだめかと思った瞬間

 ふ~!やっと全てが完了したので、全部お話できるようになりました。

イタリアからギリシャまでの2泊3日の航海が、これまでの中で一番つらい航海だった本当の理由。実は、私たち「救助」されたんです。海難事故ということで。

プリビーザの港管理局に報告書を提出するだけではなく、接触事故の被害者にもなってしまったのでその事情聴取もあったんですね。最終的に私たちに非が全くなかったことが判断されたので、こうしてお話できることになりましたが、最悪、こちらにも非があったと判断されていたらとんでもないことになっていました。

真っ暗な中、海上パトロール艇にけん引されているSATOMI号

夜が明けてもまだまだ牽引は続き、それだけまだ沖合にいたのに、航行不可能になってしまったんです。

といことで、時系列を追ってお話しますね。

11月8日の夕方5時半ごろ、いきなりエンジンがストップしてしまったんです。海は荒れていたものの、SATOMI号の頑丈な船体なら全く問題なく、私たちも揺れるのは不快に思いつつもあれぐらいは耐えられない範囲では全くなく、快調に進んでいました。メインセールをファーストリーフィング(三角を縮めた形でセールを途中まで上げること)に入れてヘッドセールもほんのちょっぴり出して、前方60度から来る風を少しでも受けてスピードアップさせようと頑張っていました。セールだけで走行するには弱い風だったのでエンジン走行していたのですが、これから日が暮れようとしている時に、いきなりエンジンが止まってしまい超パニック!

主人がエンジンを確認すると、燃料をエンジンに送る管にエンジンタンク内の汚れが、激しい揺れで移動し詰まってしまったようなんです。その都度応急処置で主人が詰まりを直しなおし、を夜中まで合計6回続けました。だんだん止まってしまう感覚が短くなり、7回目で、ついに「もしかしたら燃料が異常に減っているから汚れた部分も吸い上げてしまっているのかも。」思い、エンジン走行を断念。幸いメインセールとヘッドセールを挙げていたので、スピードは半減しましたがなんとか走行継続は可能でした。

その後30分ぐらいたって、エンジン走行できない=発電できない=ナビゲーションシステム使えない=居場所がわからなくなる、という状態に気づきました。ナビがなくてもコンパス頼りに走行することが不可能ではなかったのですが、残りの距離と、無線ラジオのための電力も朝まで持つかどうかの不安があり、燃料補給が必要だと判断、生まれて初めての「Pan Panパンパン」無線コールをしました。

「メーデーメーデー」とうのは聞いたことがある方も多いでしょうね。生命の危機に関わる非常事態発生のコードで、その1歩前が「パンパン」なのです。すると公開無線チャンネル16から、オリンピアラジオから応答がありました。事情を話すと、海上パトロールが燃料を運んできてくれるとのこと。まだまだ陸地からかなり離れた距離にいたので、パトロール艇の猛スピードでも、やってくるのに3時間弱かかりました。その間、あっちに揺れこっちに揺れながらも、少しづつ進んでいたので、30分に1回ぐらい現在位置をGPSで連絡。とにかくつくまで電力が持つかどうかが本当に心配でした。

パトロール艇がやってきて、燃料を受け渡すために近づこうとするのですが、セール走行しているので止まることができません。近寄れないのでセールを下すように言われました。この時嫌な予感があったんですよね。一旦セールをおろしたら、再度上げるのに風向きに正面になる用船体を移動させる=エンジン力が必要なんです。もしエンジンがかからなかったら・・・・と思いつつ、そん時はきれいな燃料を補給すれば大丈夫だと思っていたので、メインセールもヘッドセールも閉まってしまいました。燃料は20リットルを4つのポリ缶にわけて渡してくれたので、最初のものをまず注入してからエンジンを始動しました。やったぁ~ちゃんとかかった!それを見届けて私たちの船籍書類やパスポートをチェックしてパトロール艇は去っていきました。それからまた激しい横揺れに耐えながら、主人が船頭にある給油口から手動ポンプを使って残りの燃料を注入。これがまた大変な作業だったんです。だって捕まっていないと海に頬り出されてしまう危険があるから。ライフジャケット着用は勿論、そこに命綱を付け、フックで船体にひっかけて細心の注意を払って行っていたので全部注入し終わるまで2時間ぐらいかかりました。

やっと作業を終えて、エンジンをかけようとしたら・・・・なんと、またかからなくなってしまったんです。そんな・・・・。もうパトロール艇はとっくに立ち去っています。またエンジンと燃料タンクを主人が調べると、どうも燃料はちゃんと送り込まれているのですがインジェクターという部分までが詰まってしまったようで、もうこれまでやっていた応急処置では直せない事がわかりました。しかも、セールをおろしてしまっているので最初の状態よりさらに悪い状況になっているんです。勿論電力はどんどん減っていきます。まだ周囲は真っ暗。一番の危険は、ここは大型貨物船が行きかう航路。ナビゲーションシステムがダメ=SATOMI号の存在が大型タンカーのレーダーに乗ってこない、つまり非常に危険な状態なんですね。

仕方なく再度「Pan Pan」コール。燃料ではなく、エンジンが全く動かない、「Not Under Command」状態だということを連絡しました。もう牽引してもらう以外動く方法がない状態です。オリンピアラジオから、緊急番号に電話してレスキューを要請するよう指示をうけ、教えられた電話番号に連絡。海上パトロールにやっと連絡が取れた時、けん引はできないけれど近くにいるパトロール艇を派遣してくれるとのこと。またオリンピアレジオが周囲にいる商業船にSATOMI号が航行不可能で漂流していることを連絡してくれました。アシストできそうな船はスタンバイしてください、言ってくれています。全て公開無線チャンネル16で流れているので私たちにも聞こえています。

ここからが本当に、本当に「一巻の終わり」を感じた怖かった出来事なんです。

ふとデッキの外に私が出ていくとこちらに向かってくる大型貨物船があるのが見えました。どんどん近づいてくるんです。最初はアシストするためにみに来てくれたのかと思ったのですが、全く止まる気配なくどんどん近づいてくるんです。このままではSATOMI号にぶつかる!!まさか!!と思い主人が無線でその船のキャプテンに近寄るなって言ったんですね。
それでも近づてい来るので警笛を何回も鳴らして、存在を知らせました。SATOMI号のマストの高さと同じぐらいの背丈の貨物船がついにすぐ真横によってきて、その影響でSATOMI号はどんどん引き寄せられてしまい・・・・私は大声で「GO AWAY!
」と叫び続け、フェンダーを貨物船とSATOMI号の間にはさんで必死で船体を傷つけないようにしました。


フェンダーってこの枕みたいなゴム製のもの。船体が接触しないように接岸する時とかにはこれを何個かぶら下げます。

あっという間に、貨物船と接触。主人が無線で必死に「あなたたちの船は大きすぎて、救助どころかうちの船に被害を与えているからすぐに離れてくれ」と何回も連絡。その間私は一人でこのフェンダーをもって貨物船とSATOMI号の船体の距離を保とうと必死でした。でもぐいぐい押されて、こんなフェンダー1個じゃ守り切れない、でも絶対に傷つけたくないという一心で、怖いという気持ちはふっとび、大声で叫び続けました。

甲板にいた貨物船の乗組員がツナを投げてきました。これを受け取ったら最後、乗り込んできたら船を乗っ取られます。素手で貨物船の船体を押し戻しながら「あっちへ行け!離れてくれ!」といったいどれぐらい叫び続けでしょうか。その間もマストが貨物船の甲板に引っかかりそうになりましたが、ひっかからないよう押し戻してくれた乗組員もいてそれ以上のダメージはありませんでした。そして私たちがその船からの救助は求めてないことがやっとわかったのか、少しづづ貨物船が離れていきました。

これ、救助の名を借りた乗っ取りの意図があったと思います。国際海上法で漂流している船を救助したら、その船の所有権を得られるという非常に危険な法律があるんです。だから貨物船が投げてきたロープを受け取ったら、SATOMI号は今頃どっかの国に貨物船ともに連れていかれていたかもしれません。

幸い公開チャンネルで主人が無線で貨物船のキャプテンに連絡していたので、オリンピアラジオにも聞こえているはずです。距離を保ってから貨物船のキャプテンが「アシストは必要ないのか、助けようと思ったのに。」というので「お宅からは救助は要請していません。お宅のサイズの貨物船がSATOMI号を安全に牽引することなんか不可能だとわかりませんか。救助どころか私たちの命を危険にさらしたんです。」と強く抗議。オリンピアラジオも距離を保ってスタンバイするよう再度、周囲の船に呼びかけました。

その騒ぎはこちらに向かっている海上パトロール船にも伝わっていたのでしょう、やっとやってきたパトロール船は事前には「牽引はしない」と言われていましたが、私たちのロープを投げるよう連絡してきました。それを聞いて、やっと本当にこれで救助された、という実感。動き始めてから無線で「ご理解いただきたいのは、私たちは牽引サービスをする役目はありません。あくまでも安全のためにやっています。」と言われました。貨物船の騒ぎを知って、あのままSATOMI号を漂流させておくと同じような危険が発生すると判断してくれたからでしょう。それにそもそも、パトロール艇の要請でセールを全部下ろしてしまったのも、全く走行不可能になった原因の一つでもありますから。

牽引されたからといって、のんびりできないんですよ。常にちゃんと牽引してくれている船に対して真後ろにいるように私たちも舵を取り続けないといけないんです。エンジンがかかりませんから、当然オートパイロットも電力不足で使えないし、自分で航路をプログラミングしているわけじゃないから、電力が十分にあってのオートパイロットは使えません。つまり手動でずっと舵を取り続けるんです。牽引が開始してから、まだ岸につくまで10時間ちょっとぐらいはかかる距離にいました。夜が白白と明けてくるまでだいたい2時間ぐらいあったでしょうか、主人が休みなく舵を取り続け、仮眠をした私と時々交代しました。

お昼近くになって、海上パトロールの船から民間のレスキュー業者の船に交代となりました。それがこの赤いボート。パトロール艇よりは小さいですが馬力はバッチリでした。交代してから、さらに5時間ぐらい牽引が続き、やっとプリビーザの町が見えてきました。


ずっとこんな風に舵を取り続けました。体中の筋肉が筋肉痛で、その後数日間動くのが苦痛でした。

プリビーザの町の反対側にあるクレオパトラマリーナに接岸するまで牽引してくれて、無事接岸すると岸にはマリーナのスタッフの方が何人も出迎えてくれていました。着いたからといってほっとしてはいられませんでした。入港後の手続き、コロナ検査のこと、そして港管理の部署に報告書を提出しないといけなかったんです。

30時間ぐらいほとんど寝ていないかったので、頭はぼーっとしているし、で取り合えずこの日はすぐに眠りました。それから、時系列順に報告書をまとめはじめたのですが、ハーバーマスーターに事情を説明に行くまでは、全く落ち着かず。もし私たち側に少しでも非があると判断されたら、どんな処分が下るか想像がつかなかったからです。救助された事以上に、救助要請を受けてた貨物船との出来事が非常に問題になっていて・・・・・記録が残っているので貨物船側の行動が悪質だったというのは周知の事実なのですが、それを認めた場合、レスキュー要請したオリンピアラジオにも責任が発生するのかどうか、という部分で、海上パトロール側も敏感になっていたと思います。ですが、ハーバーマスターによる事情聴取の中、私たち側は貨物船の行動に対して訴訟を起こす意図はないが、出来事はその通りに記録として報告書に残したい、という意思が理解され、提出した通りの報告書で受領してもらい、それ以上は何もなし、これにて一件落着、ということになりました。

SATOMI号のダメージは、船体周囲の柵をささえるメタル(ストンション)が少し曲がった程度で、船体にもちょこっとかすり傷程度なので、大幅修理は不要です。でも巨大な貨物船に押しつぶされるかもっていうあの恐怖は、かなり応えました。

その瞬間は怖いより「よくもSATOMI号にダメージをあたえようとしたなぁ~!」という怒りの気持ちでいっぱいだったので、必死で戦いましたが、後で考えたら・・・・絶対絶命ってああいうことだったなぁ~って、ぶるっとしました。そしてSATOMI号が万が一略奪されたとしたら・・・・正直船そのものより、積んでいるスタンピン・アップ製品を奪われることの方が許せないって思った私は・・・・自覚していた以上にスタンピン・アップ狂でした。

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2 件のコメント:

  1. OMG Satomi!!! Even with the terrible google translate, I can tell that this was a horrendous situation! So they're like pirates? I'm so glad you're safe and well. xxx

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    1. Yes, it was scary. Yes, that was a kind of piracy but it is allowed by law when you ask for being rescued. It was hard lesson.

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