皆さんこんにちは!Sailing Stamperウェラード里美がお送りする手作りカードとギリシャ船上生活レポの世界にようこそ!
海上に戻ってもトランジットログ、という出航許可が下りなければプレべザハーバーから出ることすら禁止なんですね。すったもんだの結果、めでたく昨日5月27日に「無制限」のトランジットログを取得することができました!あ~もここまでの道のり長かった~。
これが「トランジットログ」。小冊子です。ギリシャ海域を出入りしたり、海上に滞在している時の記録なので、ヨットのパスポートみたいな機能もします。
まず最後にトランジットログの事をお話した時に戻ってみましょう。すでに2週間ぐらい前になりますが、全ての必要書類を手続き代行サービスを営むランブリーニさんに提出したところ、ギリシャ税関から、VATという税金支払い済み証明として私たちが提出した前オーナーからの「VAT支払いましたよ宣誓書」では不十分という返事がきました。それが5月13日(木)の事。その時点では5月18日(火)に海上に戻そうとしていたので、大慌てでイタリアのヨットブローカーに連絡をして「前オーナーの宣誓書はダメだそうです。弁護士の宣誓書とかもダメです。とにかく公の機関からの書類、イタリア税関や法務省とかからの支払い証明、または支払い時のレシートしかダメだっていってるので、何とかそれをゲットしてください。」とひたすらプッシュしました。ブローカー会社のオーナーさんとも直接話して、その辺りしつこく念を押しました。以前にも似たようなことがあったという事で、大丈夫という返事でした。
5月14日(金):ブローカー会社の弁護士が、ギリシャプレべザの税関担当者に電話をかけて、直接イタリアでの船舶売買の習慣を説明しようとしました。が、担当者につながらず。あとでわかったんですが、担当者はこの日から仕事をお休みしていました。ブローカーの弁護士がギリシャ税関に送った書類ではすでに不十分と言われていたので、再度その旨を理解してもらい、イタリアの公的機関からの書類しかダメです、と念を押しました。
5月17日(月):プレべザ税関担当者が一週間お休みを取っていて24日(月)まで何もことが進まない事がわかりました。取り合えず18カ月のうち180日間は航海してもいいという、制限付きのトランジット・ログは出ると思うので、一旦それで申請しておいて、書類が整い次第、無制限のトランジット・ログに後ほど変更するという方法を教えてもらいました。
5月18日(火):イタリアのブローカーからの返事がないままなので、再度メールで、イタリア税関には連絡をしてもらっているのかどうか確認。
5月19日(水):なんと記録が残っていないと言われていた、前オーナーが購入した際の領収書のPDFがブローカーより送られてきました。前オーナーがVAT支払い領収書を失くしていたのですが、そのオーナーが購入した会社からの領収書が、その会社のデーターベースに残っていたのを発見したとのこと。最初からこれがあれば一発で大丈夫のはずだったのです。
で、前オーナーがILYOS(SATOMI号の前の名前)を購入する前は、このヨットは法人所有のものだったようです。おそらく前オーナーが経営する会社だと思うんですが、その購入価格がなんと、私たちが購入した価格の1/6程度で領収書に記載されていました!!!なので当然それに関するVATもかなり少額。これって大丈夫なの?って思いましたが、法律違反ではなく税金対策だったんだろな、というのがわかりました。つまりですねぇ~、法人がヨットを購入した場合は、VATの支払いは免除になるそうです。別会計で経費ということでとっかに計上されるんでしょうが、船購入に対するVAT支払いはないのです。そのまま会社財産としてしばらく所有しておいて、古くなってきたら価値が減るわけですね、その時点で会社は経理上価値があまりない財産ってことで減少した価値で前オーナーさんに転売したわけです。個人が購入した際にVAT支払いが発生するのですが、その金額が少なければ税金も当然小さいわけです。前オーナーさん自体が会社の所有者であれば、めっちゃめちゃ低い価格でヨットを売り買いしても同一人物だし、法律上は何の違反もしてませんから、全く損はなし。それを私たちに、通常のSATOMI号のようなヨットで中古の場合ならこのぐらいの値段は納得できるよね、という値段で売りに出したわけですね。個人間の売買の場合はVATの支払い義務はなく、さらにすでにVAT支払い済みであれば、その金額が大きかろうと小さかろうと私たちには無関係です。
すぐに代行サービスのランブリーニさんに提出しました。ここから数日やきもきしながら待つことになるんですが、お休み中の担当者、実はご本人ではなくお母さんが病気になっていたそうで、自宅から仕事をしていたそうです。再発行してもらった領収書を担当者に送ってもらいました。ランブリーニさんの話によるとVATの金額が少なすぎるという風に担当者が言っているとのこと。イタリアの領収書を発行した会社について調べる、と担当者が言っているそうです。
5月21日(金):ランブリーニさんから「多分無制限で出してもらえそうですが、VATいったん支払った後、払い戻し申請をしていないかどうかを調べてるらしいです。」と知らされました、払い戻しはしていないという確認をイタリアのブローカーに取ったので、その旨を話すと「ではロブさんご自身の責任において払い戻しはしていない、という宣誓書を用意してください。」とのことでした。万が一、後ほどなにか不穏な状態になった場合のために、私主人がブローカーに「VAT払い戻ししていない宣誓書を出すことになったけど、大丈夫ですよね。」とメール。ブローカーから「払い戻しはされていないので安心してください。」の返事を受けました。これで、万が一、そうでなかった場合でも、私たち自身はVAT支払い済みという情報を受けたという証拠ができました。
午後また電話がきて、「昨年11月からプレべザにいるということで、その時にトランジット・ログを申請しないといけなかったのに、していないということで罰金がかかると言って来ています。クルージングタックスを払っていないですよね。」とのこと。主人が「クルージングタックスは、11月からずっとハードスタンドにいて海上にはいなかったので必要ないですよね。トランジット・ログはハーバーポリスに行った時に、航行できる状態の船ではないので必要ないと言われました。」といきさつを説明。ずっとマリーナのハードスタンドにいたという証明のため、マリーから記録を取得しました。ハーバーポリスの方は、エンジントラブルで航行不可能な状態でそれが修理できるまで航行禁止というレポートを出してもらっていたので、そのコピーを提出することになりました。
5月24日(月):ランブリーニさんの事務所に朝8時半に行きました。その日税関担当者が出勤するはずだったのですが、その日も来ていなかったとそうです。でも無制限のログで話が進んでいる感触だ、と教えてくれました。さらに担当者との電話で、プレべザに最初に来た時にトランジットログを申請しなかった事に関して1500ユーロの罰金がかかるという話になっているということでした。帰宅してから、メールでハーバーポリスの責任者に「昨年11月、航行不能状態で牽引されて入港した時に、トランジットログは不要だと言われましたよね。」というメールを出しました。さらに、税関からそのことを違反だと言われていると連絡しました。すると直接会って相談にのってくれるとのことでした。
5月25日(火):おそらく何らかのトランジット・ログは出る、ということでいよいよ海上に戻る事に!海上に戻り、エンジンチェックの間にランブリーニさんから電話があり、多分大丈夫だけど、やっぱり罰金の事を言っている!と再度連絡が入りました。そして直接税関の担当者に合って説明する予約を取ってくれました。
5月26日(水):まず朝一でハーバーポリスの責任者に会いました。トランジット・ログは不要だと指示したことを認識してくれて「税関担当者から私に直接電話してくるように言ってください。その時、私がそう指示をしたと証言しますから。」と心強い言葉。その後ランブリーニんさんの事務所に戻り、追加で求められた書類をもって税関に向かいました。
コロナ対策ということで建物の中にはいれてもらえず入口に担当者が出てきて対応してもらえました。罰金の事を言ってきたので主人が「ハーバーポリスの指示に従った」事を説明すると「でも税関とハーバーポリスのルールは違うのです。管轄が違うから。」と言い返されたんです。表情も厳しい感じで、譲らない感じ。ランブリーニさんが、ハーバーポリスの責任者が証言すると言っていますので連絡してもらえますか?とさらに押しました。税関担当者が私たちのビザの状態を示す正式書類を見ているうちに、私に「あなた日本人なの?」と聞いてきました。「はい」と答えると「どのエリアの出身なの?」「日本の場所の事ご存知なんですか?」と答えると急に和やかな表情にかわって「一昨年日本にホリデーで行ったの。東京、京都、広島に行ったのよ。」と話しだしたんです。「わあ~いい所にいきましたね。新幹線も乗りました?」「乗ったわ!早すぎて窓の外の景色がぴょんぴょん飛んでいくようでおもしろかった!」と担当者の雰囲気が気さくな感じに変わっていきました。「私は愛知県といって、トヨタの会社がある豊田市というところの近くです。東京と京都の間ですよ。」と答えると、「あらトヨタっていう都市があるの?」と、なんだかとってもカジュアルなおしゃべりになってきたんですね。そして私たちがギリシャの永住ビザと取ってまで長くギリシャの海を航海するのが夢で、ギリシャが大好きでっていう話をしたら、「わかりました。少しお待ちください。」と建物の中に戻っていきました。
その後担当者が戻ってきてその日の午前に11時に連絡するといったそうです。(その場にいたけどギリシャ語だだったので。)ランブリーニさんが「大丈夫、無制限で出ると思う。」と言ってくれました。それからカフェで遅い朝食をしながら待ったのですが、11時になっても連絡が来てなかったとのこと、一旦マリーナに戻ることにしました。午後になって、ランブリーニさんから「無制限でゲットできました!」と嬉しい連絡が入りました。もう信じられないぐらい嬉しかったです。主人が「絶対日本人だってことが幸いだったよ。話始めたら雰囲気が和やかになったよね。」と言い、私も実はちょっと思ってたんですよね。急に親しみが出てむっつりな表情の担当者が笑顔になって話始めましたから。ギリシャ人の方って全般に人情深い印象を持っていて、ちょっと親しくなるとすごく親切にしてくれるなって感じていました。
Unlimited=無制限と書いてあります。ブルー字はギリシャ語。
メニューに私たちの大好きな「エッグベネディクト」を見つけて嬉しかった!メニューにはハムのバージョンしかなかったのですが、スモークサーモンに変えられるか聞いたら、元気なウェイターさんがしっかり対応してくれました。
ここまで事を複雑にしたのは、私たちの状況がまれな状況だからなんですね。船籍がオーストラリアなのでNon-EU船籍、でも乗っている私たちはギリシャのレジデントビザを持っているのでEU圏内の人。レジデントの人の船はVATを支払っている必要があり、当然支払っていますがその証拠がイタリアのもので、個人の宣誓書だったこと。さらに最初にプレべザに到着した際に、ポートポリスが税関への報告は必要ないと指示したこと。さらに、コロナの影響で今でもギリシャの公の機関はフル活動しておらず、税関も個人で手続きを行う場合は現在メールのみの対応しかしてくれない状態です。代行手続きエージョントなら直接担当者に会えるのです。
これまでビザに関わる手続きは自分達でやっていたので、ギリシャに来てからも当然そのつもりだったのですが、レジデントビザの取得手続きの時も今回のトランジットログの際もそうでしたが、ギリシャでは、ちょっと通常ではない状況の場合、代行手続きをするプロにお任せしないとことが運ばない事がよくわかりました。とにかくこれぞまさしくお役所仕事!という処理の仕方で、融通は全く利かず、とにかくどっかに穴があないか、とチェックされ毎回「この書類が足りません。」と突き返されるんですね。だったら一度に「これとこれが足りていませんよ。」と教えてくれればいいのに!さらに担当者によって采配が決まる部分が大きいので、個人的なつながり、つまりコネがあると非常に有効。税関担当者も、私が日本人だとわかった途端に態度が和らいで親しい感じになりました。書類的にはちゃんと全部そろえたのですが、イタリアの書類はどうもあまり信用されていないらしく、さらにVATの金額が異常に小さいこと(税金対策だってのはまるわかり。でも法律違反ではありませんから。)を疑われました。だから個人でやっていたら、おそらくその辺りを徹底的に追及されたり、ポートポリスからの指示も「ポリスと税関はルールが違う」と却下されたりして、「無制限トランジットログ」が下りなかったかもしれません。それどころか罰金まで払う目になっていたかも。メールだけで応対だったら、日本にホリデーに行った担当者との会話はなかったはずだし。
代行手続きのランブリーニさん自身が「本当にギリシャのお役所は融通が利かないの。私がビジネスをスタートした時のライセンスも、物凄く矛盾したことをつっつかれてなかなか許可してもらえなかったのよ。」と言われていました。移民法の弁護士さんも、代行手続きのランブリーニさんも、仕事の内容からしたら私たちにとっては費用が格安と思えるので、十分お願いした価値がありました。これからも、あまり自分達だけでやろうとしないで、プロに頼めることは頼んだ方が時間と労力の節約になるなって思ったんです。
さて、27日の朝、念願のトランジット・ログをゲットし、全ての手続きが済んでから朝食場所を探していると、公のハーバーの岸にバック直角駐車(Stern To)で今まさに入ろうとしてくるヨットを見つけました。私は実際にその状況を見たことがないので、(イタリアのマリーナで1回だけ実際に経験しましたが、超怖かった!しかも強風の中)じっくり観察することに。
お話をきくまえに想像していた事が、結構違っていたりして、本当に声をかけてみて良かった!そして驚いたのは、ギリシャでは(ヨーロッパでは?)他人の船に接触してもフェンダーが接触するのなら誰も全然気にしないとのこと。こうやってバックで駐車の際は、よく隣のヨットをガイドとしたり、一旦隣のヨットに仮接続してから体制を整えることも普通だということ。オーストラリアではマリーナ内で、フェンダーが接触しただけでも周りの人がピリピリするので、すっごく気をつかっていました。「そのためのフェンダーだから大丈夫ですよ。」というお話で、一気に気が楽になった私です。
0 件のコメント:
コメントを投稿